震災の年が明け、日本の底力を示す新たな年が始まりました。とはいえ、日本の雇用環境は就業率がやや改善したとはいえ、失業率は依然として4.5と高く、今年度雇用契約が切れる小生も三度仕事探しで苦労しなければならないことでしょう。趣味にばかり現を抜かしてなどいられませんが、月に一度は息抜きをしつつ、今年も細々とカメラ片手にあちらこちらと歩き回ることになるのでしょう。
間もなく大寒を迎えようとする日本列島。今日は寒中の長野県湯田中渋温温泉郷地獄谷温泉に足を向けます。ツアーバスは23人のカメラ愛好家を乗せて午前7時半に新宿都庁地下駐車場を出発します。今回のツアーは一人二席利用と銘打っているため、足を伸ばしてのゆったり旅行となりました。バスは関越道から長野道、北陸道を順調に走り、午前11時半には駐車場のある上林温泉へ到着しました。
天気は思ったほど寒くなく、例年ならアイスバーンになっている温泉街のコンクリート道路も今年は地肌がむき出しになっています。地獄谷温泉へはここから林道を歩いて30分の距離ですが、さすがに林道は40センチの雪に覆われ、持参したアイゼンが功を奏します。
地獄谷温泉に到着すると林道は石段の山道へ変わり、長くはありませんがかなりの急勾配を息も絶え絶えに登り詰めるとやっと野猿公園に到着です。肩にかけたザックが撮影の邪魔になるのは経験で分かっていましたから、ザックはバスに置き、カメラ2台を首にぶら下げ、交換電池など必要最小限の荷物はポケットに忍ばせ早速撮影開始です。
今回は3度目の地獄谷訪問となり、深深と降る雪の中、温泉で瞑想に耽る哲学的風貌の猿を狙うのが目的でしたが、積雪は多いもののまたもや降雪がありません。1〜2日前であれば雪が降っていたらしいのですが、こればかりは文句言っても仕方ありません。温泉に入る猿は海外でもsnow monkeyとして有名で、この日も随所で外国語が飛び交っていましたし、海外メディアも撮影に訪れ、インタビューを受けた人も居たようです。
ところで一番人気なのはやはり温泉に浸かる猿たちの姿態です。じっと目を閉じ瞑想に耽るもの、親子、兄弟で背中を流し合う(?)もの、場所争いで喧嘩をするものなど、人間社会では余り見られないようなストレートな感情表現が見られて見ていて飽きないものです。しかし、餌付けされたとはいえ野生の猿の生活がここにはあります。一見バラバラに行動しているように見えますが、そこにはボスの統率の元、統制のある社会が築かれています。統率に従わない猿はボスが強烈な制裁を加えます。それを知ってか知らずか子猿たちは無邪気なものです。去年の春から夏に掛けて生まれた子猿たちのようですが、至る所ではしゃぎ回りカメラマンの笑いを誘うと同時に良い被写体になっていました。、
ところで日本各地の他の野生猿の出没地では、観光客の食料を強奪するなど猿の傍若無人な振る舞いが問題になっていて、猿は怖いものという先入観がありますが、ここはかなり違います。きちんと定期的に餌付けされている猿たちは、観光客の餌付けは厳禁ということもあり、特に目立った行動を取らなければ、どんなに近くに寄っても猿は無視をしています。そこにはまるで人間社会で言う「紳士協定」のようなものがあり、目の前30センチでカメラを構えても面倒くさそうな素振りは見せるものの、直接目を見ない限りはちゃんとモデルになってくれます。まるで、観光客の落とすお金が自分たちの餌代になっているのを知っているかのような振る舞いで、猿が身近に感じられる時間でもあります。
日中温度は氷点下5度前後だと思われますが、周りを志賀高原のスキー場に囲まれた谷間にある野猿公苑は直ぐに日が陰り寒さが襲ってきます。私は狭い苑内を何往復もしてシャッターチャンスを狙いますが、寒さに耐え切れなくなると休憩小屋に戻り煙草を燻らせるその繰り返しです。お昼から2時間半ほど撮影を続けましたが、帰りのバスの時間は午後4時。バスに戻るまで再び林道を30分歩かなくてはなりませんから、それを見越して3時過ぎには撮影を止めなくてはなりません。実際には寒さに負けて午後2時半には帰り支度を始め、午後3時には麓の上林温泉で暖かいコーヒーを飲んでいたのですが。
深深と降る雪を頭に被り瞑想する温泉猿は今回も撮影できませんでしたが、3回目ともなると猿たちの行動が分かるようになり、無駄な動きをせずに自分なりの良い写真が撮れたものと思います。できればもっと的確なシャッターチャンスをモノにできるよう、来年も足を伸ばすことになるのかも知れません。